オマル=ハイヤーム『ルバーイヤート』

11世紀のペルシアの詩人ウマル=ハイヤームによる詩集。世界史の授業で聞いたことがある人も多いのでは。イギリスの詩人エドワード=フィッツジェラルドにより英訳されたのをきっかけに、その存在が世界的に知られるようになった。

オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』
5.0

酒好きの間では知られた(?)もっと読まれるべき名著。深淵だが難解ではなく、酒と人生の歓びとはかなさを詠っている。全体はそんなに長くないものの、味読するならいつまでも読んでいられる。

刹那的な人生を詠いながら、必ずしもそれを嘆くわけではなく、かといって過度に楽観するでもなく、むしろ現実を粛々と受け止めよと説くようである。その際、詩にあらわれる人生観のなかで酒が果たす役割は大きく、死生を宙づりにする酔いへと読者を誘うことたびたびである。

歓楽もやがて思い出と消えようもの、
古き好(よしみ)をつなぐに足るのは生(き)の酒のみだよ。
酒の器にかけた手をしっかりと離すまい、
お前が消えたって盃(さかずき)だけは残るよ!

恋する者と酒のみは地獄に行くと言う、
根も葉もない戯言(たわごと)にしかすぎぬ。
恋する者や酒のみが地獄に落ちたら、
天国は人影もなくさびれよう!

すべての酒好きに読んでほしい、酒と盃へのオマージュだ。しかし、アルコールへのオマージュではない。酒や盃の詩は必ずと言っていいほど、人とのつながりが言及されている。酔いは個人の現象として讃えられるのではなく、等しく死に直面する人間どうしがほんの束の間それを忘れるための、共通のよすがとして要請されているように見える。

ちなみに、アラブの酒を詠った詩ではアブー・ヌワース有名だが、こちらはまた別の機会に紹介したい。

アブー・ヌワース『アラブ飲酒詩選』
5.0

アブー・ヌワースは8世紀から9世紀にかけてアッバス朝イスラム帝国の最盛期に活躍し、酒の詩人として知られる。現世の最高の快楽としてこよなく酒を愛した詩人は酒のすべてを詩によみこんだ。その詩は平明で機知と諧謔に富み今もアラブ世界で広く愛誦されている。